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抗VEGF硝子体注射

目次

抗VEGF硝子体注射とは?

抗VEGF硝子体注射
抗VEGF硝子体注射とは、網膜治療の注射のひとつで、特に視力低下を防ぐのに効果的な治療法です。
この治療法は、眼内にできた異常な血管や浮腫(腫れ)を抑えるために行われます。
具体的には、目の中にある「VEGF(血管内皮増殖因子)」という物質の働きを抑える薬剤を、白目(硝子体内)に直接注入します。この「VEGF」という物質は、本来体内で血管を作るために必要なものです。しかし、特定の眼疾患ではこの「VEGF」が必要以上に生成され、異常な血管の増殖や黄斑浮腫(むくみ)の悪化を引き起こす原因に。

抗VEGF療法を用いることで「VEGF」の働きを抑え、目の病気の進行を止めたり、視力を守ったりする視力回復治療です。

※「抗VEGF療法に関する基礎情報や作用メカニズムを確認する場合は、日本眼科学会の解説ページをご覧ください。

抗VEGF硝子体注射の2つの効果

目がつらい痛い
抗VEGF硝子体注射は、以下の2つの大きな効果があり、網膜治療や黄斑浮腫治療などの網膜治療で使われています。

1.血液成分の漏れを抑え、黄斑部の浮腫を改善

  • 血液成分の漏れを抑え、黄斑部の浮腫を改善:黄斑部(ものを見るときに大切な部分)にたまった体液を減らします。
  • 「網膜静脈閉塞症」や糖尿病の合併症の「糖尿病黄斑浮腫」などの症状を軽くし、視力の回復が期待できます。

異常な血管を抑え、血液の漏れを防ぐ

  • 加齢による「加齢黄斑変性」や「病的近視」などで発生する異常な血管(新生血管)を縮小します。
  • 血液の漏れを防ぎ、視力低下を予防し、日常生活をより快適にする視力回復治療です。
このように、抗VEGF硝子体注射は、視力の維持や改善が期待できるため、これらの疾患に対する最も有効な治療法とされています。

抗VEGF硝子体注射が適応される疾患

抗VEGF硝子体注射は、主に下記の6つの網膜治療の病気に対して行われます。
加齢黄斑変性(AMD) 加齢によって黄斑部(中心視野をつかさどる部分)に異常な血管が発生し、視力障害を引き起こします。
糖尿病黄斑浮腫 糖尿病患者の眼の中に液体が漏れ、黄斑部が腫れる状態です。血糖コントロールが難しい患者で頻発します。
網膜静脈分枝閉塞症 網膜の血管が詰まり、酸素不足によって異常な血管が生じます。
近視性黄斑部新生血管 強度近視による眼球の変形で黄斑部に新生血管が発生します。
網膜中心静脈閉塞症 網膜の主要な血管が詰まることで、視力低下や失明のリスクが高まります。

網膜の病気の種類や症状・治療法についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

治療の流れ

抗VEGF硝子体注射は下記の手順で行います。
治療では白目の安全な部分を選んで薬剤を注入するため、施術は短時間で終わります。また、使用する針は通常の採血や注射よりも非常に細く、刺した後の傷口もすぐに塞がることが特徴です。
これにより、患者様の負担も最小限に抑え、安心して網膜治療が受けられるようになります。
STEP1

消毒

抗VEGF硝子体注射の流れ
目の周囲を徹底的に消毒します。
STEP2

麻酔

抗VEGF硝子体注射の流れ
点眼麻酔をして、痛みを軽減します。
STEP3

注射

抗VEGF硝子体注射の流れ
専用の針を使って、白目部分から硝子体内に薬剤を投入します。
手術自体は1分程度で終わります。
痛みもほとんどありませんので安心して治療して頂けます。

クリニックの診療時間やアクセス情報についてはこちらをご確認ください。

抗VEGF硝子体注射の種類と特徴

抗VEGF硝子体注射は、主に4種類の薬を投与します。
それぞれの薬の特徴は以下です。患者様の症状を確認し、最適な薬をご提案させていただきます。

 

抗VEGF硝子体注射

ラニビズマブBS

ベオビュ

アイリーア

バビースモ

適応疾患

– 加齢黄斑変性

– 糖尿病黄斑浮腫

– 網膜静脈閉塞症

– 網膜中心静脈閉塞症

– 加齢黄斑変性

– 糖尿病黄斑浮腫

– 加齢黄斑変性

– 糖尿病黄斑浮腫

– 網膜静脈閉塞症

– 網膜中心静脈閉塞症

近視性黄斑部新生血管

– 加齢黄斑変性

– 糖尿病黄斑浮腫

– 網膜静脈閉塞症

持続効果

約4週間

約12週間

約8〜12週間

約16週間

副作用リスク

投与スケジュール

最初の3回は毎月

4〜6週間ごとに調整

最初の3回は毎月

12週間ごとに継続

最初の3回は毎月

8〜12週間ごとに継続

最初の3回は毎月

16週間ごとに継続

メリット

・視力改善効果が高い

・適応疾患が広い

・長い持続効果がある

・治療回数をさらに減らせる

・治療頻度が少ない

・患者の負担が軽減できる

・持続性が非常に高い

・通院頻度を大幅に減らせる

デメリット

・毎月の治療が必要な場合がある

・負担が増える

・炎症リスクが他薬剤より高い

・費用が高い

・副作用リスクが中程度

・非常に高額

・導入している施設が限られる

おすすめの方

・効果重視で早い段階から視力改善を期待する方

・治療頻度を極力減らしたい方

・通院が難しい方

・忙しくて頻回治療が難しい方

・長期効果を求める方

・通院が難しい遠方の方

・治療スケジュールを減らしたい方

費用(片眼)

1割負担:7,428円

3割負担:22,285円

1割負担:約6,000円〜

3割負担:約18,000円〜

1割負担:約6,500円〜

3割負担:約20,000円〜

1割負担:約8,500円〜

3割負担:約25,000円〜

 

抗VEGF硝子体注射の費用と保険適用

抗VEGF硝子体注射は日本国内では保険が適用されている治療法です。
詳しい治療金額は以下の通りです。

ラニビズマブBS

ベオビュ

アイリーア

バビースモ

1割負担

7,428円

約6,000〜7,500円

約6,500〜8,000円

約8,500〜10,000円

1割負担+診察料+処置料

約16,000〜18,000円

約16,000〜17,500円

約16,500〜

18,000円

約18,500〜20,000円

3割負担

22,285円

約18,000〜22,000円

約20,000〜25,000円

約25,000〜30,000円

3割負担+診察料+処置料

約46,000〜56,000円

約48,000〜52,000円

約50,000〜55,000円

約55,000〜60,000円

※抗VEGF硝子体注射は複数回にわたって治療することがあります。

下記のような制度を利用することで、手術費用をさらに軽減できる可能性があります。ぜひ活用してみましょう。
  • ●高額療養費制度:医療費の月間負担額が一定額を超えた場合、その超過分が払い戻されます。制度高額療養費制度について詳しくは、厚生労働省の公式サイトをご確認ください
  • ●医療費控除:1年間の医療費が10万円(または総所得の5%)を超えた場合、その超過分を所得税から控除可能。医療費控除の申請方法は国税庁の公式ページをご覧ください。
  • ●公的支援制度:市区町村による支援制度や特定の疾患を対象とした医療費助成制度です。

抗VEGF硝子体注射の治療後の注意点

紫外線対策
治療後には、いくつかの注意が必要です。以下の点に気をつけましょう。
●注射後数日は、目をこすらないようにしてください。
●激しい運動や水泳など、目に負担がかかる行動は避けてください。
●異常を感じた場合は、速やかに眼科を受診しましょう。

治療が適さないケース

抗VEGF硝子体注射は、多くの患者様に適応される治療法ですが、以下の条件に該当する場合は治療が適さない場合があります。

●妊娠中や授乳中の方(安全性が十分に確認されていないため)。
●眼内に感染症がある場合や、重篤な全身感染症を患っている場合。
●治療に使用する薬剤に対してアレルギー反応がある場合。

抗VEGF硝子体注射のリスクや副作用

治療の安全性は高いですが、稀に以下のような副作用やリスクが報告されています。

一般的な副作用

目をこする
抗VEGF硝子体注射は安全性が高い治療法とされていますが、以下のような副作用が起こる可能性があります。
●結膜下出血:白目の部分に出血が見られることがありますが、通常は数日〜数週間で自然に治癒します。
●眼圧の一時的な上昇:注射直後に眼内圧が一時的に上昇することがあります。

どちらも一過性のものですので、時間とともに自然に治癒していくためご安心ください。

稀なリスク

極めて稀なケースとして、以下のようなリスクが起こる可能性があります。
●眼内炎(感染症):治療後に細菌感染が起こる場合があります。急激な視力低下、霧視、眼痛、充血の症状が見られ、失明のリスクもありますので、迅速な治療が必要です。
●網膜剥離:注射による影響で網膜が剥がれることがあります。飛蚊症(小さなゴミのようなものが見える症状)や光視症(視界の中に閃光のようなものが見える症状)の自覚症状から始まり、最悪の場合は失明の可能性もある病気です。自覚症状が現れた場合は、すぐに眼科を受診してください。
これらは非常に稀なケースですが、異常を感じた場合は早急に医師の診察を受ける必要があります。
相談
抗VEGF硝子体注射は、安全性の高い治療法ですが、リスクを正しく理解した上で治療を受けることが大切です。不安や疑問があれば、遠慮なく医師に相談してください。適切な治療とケアを続けることで、視力を守りながら、より快適な生活を送ることができます。

※眼内炎の詳細な情報については、日本眼科学会のページをご覧ください。

※網膜剥離についての症状や治療法はこちらを参考にしてください。

よくある質問

Q治療は痛いですか?
A

点眼麻酔を使用するため、治療中の痛みはほとんど感じません。手術後、注射部位に軽い違和感や目が赤くなることがある場合がありますが、時間とともに治まります。

Q何回治療が必要ですか?
A

症状や疾患の種類によりますが、多くの場合、初期は3回連続で毎月、その後数ヶ月ごとに継続的な治療が必要です。医師が患者ごとの治療スケジュールを提案します。

Q妊娠中でも受けられますか?
A

妊娠中や授乳中の場合、治療の安全性が確立されていないため、治療を受ける前に医師に相談する必要があります。

Q副作用が出た場合はどうすればいいですか?
A

注射後に強い痛みや視力の急激な低下、目の充血が強くなる場合は、速やかに眼科を受診してください。

Q治療の効果はいつ実感できますか?
A

個人差がありますが、多くの患者さんは治療を数回受けた後に効果を実感します。早期発見・治療で視力の維持や改善が期待できます。

Q治療後の日常生活に制限はありますか?
A

治療後数日は激しい運動や水泳を控えてください。また、感染症を防ぐため、目を強くこすらないよう注意してください。

Q両眼の治療は同日に受けられますか?
A

多くの場合、安全性を考慮して片眼ずつ治療します。治療間隔については医師と相談してください。

まとめ

院長手術
抗VEGF硝子体注射は、網膜治療や黄斑浮腫治療として多くの患者様に選ばれている視力回復治療です。視力の維持や改善を目指す治療法として注目されています。
特に、加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫など、視力に大きな影響を与える疾患において、効果がしっかりと確認されています。
ただ、目の状態や症状は人それぞれです。そのため、専門医としっかり相談しながら、自分に合った治療方法を見つけることが大切です。不安や気になることがあれば遠慮なく医師に尋ねてみましょう。
きちんとした治療を受けることで、視力の維持や日常生活がもっと快適になる可能性があります。